組織的な大学院教育改革推進プログラム「人間科学データによる包括的専門教育」
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セミナー
特別シンポジウム「格差社会における階層意識の現状と課題」
 「価値意識と階層との関連の変容」轟 亮(金沢大学准教授)
 「階層帰属意識の数理モデルの展開」浜田 宏(東北大学准教授)
 「階層意識項目設計における課題と可能性—2005年SSM調査を中心に—」小林大祐(仁愛大学准教授)
 「社会調査における標本設計と回収率低下問題について—日本人の国民性調査を素材として—」前田忠彦(統計数理研究所准教授)
 コメンテーター:近藤博之(大阪大学教授)
 活動報告:吉川 徹(大阪大学准教授)
日時:2009年12月12日(土) 13:30-17:30
場所:大阪大学人間科学研究科 東館ユメンヌホール

階層意識研究は、高度経済成長後の日本社会について何を明らかにしてきたのか。そしていま、「格差社会」といわれるなかで、わたしたちは世論や社会意識のどのような動きに注目していくべきなのだろうか。半世紀以上にわたって継続される「社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)」プロジェクトにおける階層意識研究の意義を再確認し、階層意識研究の現在の課題と今後の可能性を包括的に論じた。

まず、第一報告「価値意識と階層との関連の変容」(轟氏)では、2005年SSM調査の意識項目(特に権威主義項目)の分析結果を踏まえ、階層意識探究の方向性についての考察があった。特に、階層と関連することが理論的に想定されるさまざまな意識の「階層性」の低下がみられるなかで、どのように調査をデザインしていくかということが話された。

第二報告「階層帰属意識の数理モデルの展開」(浜田氏)では、まず、階層研究において理論が必要であることが指摘され、階層意識の数理モデルでその問題に接近していくという戦略が述べられた。そしてFKモデルの仮定(辞書体式順序、ランク同質性)を一般化し、階層プロフィール比較における半順序と、人びとが自分の位置を判断する際に考慮する属性や資源のランクが異なることを仮定したときに、モデルがどのように定式化されるかが検討され、その結果、モデルが一般化されてもFKモデルの基本的なインプリケーション(中意識の肥大現象)が損なわれないことが確認された。また最後に、SSM2005年調査を用いてモデルの予測の経験的妥当性が検証された。

第三報告「階層意識項目設計における課題と可能性—2005年SSM調査を中心に—」(小林氏)では、まず、近年の階層帰属意識の分布の変化(「中」の減少と「下」の増加)が指摘され、それがどのような背景でもたらされているか、社会調査法の観点からの考察があった。特に、2005年SSM調査で「わからない」が増加したのは、選択肢に「わからない」が含められていたことによる可能性、面接調査法によって中間選択肢に回答が偏る傾向が指摘された。最後に、調査法によって回答が影響される可能性を考慮しながら、調査をデザインしていくことの必要性が主張された。

第四報告「社会調査における標本設計と回収率低下問題について—日本人の国民性調査を素材として—」(前田氏)では、「日本人の国民性」全国調査の紹介と、社会調査における標本設計上の課題と、回収率の低下をめぐる現状と課題についての報告がなされた。標本設計については、有効な層化変数と、地点当たりの標本サイズの検討が必要であることが指摘された。回収率の低下については、さまざまな調査における近年の回収率の低下の指摘があり、その解決策として事後的なサンプル補正と調査実施条件面での対策についての話があった。ただし、回収率を向上させる「魔法の薬」はなく、事後的な補正を加えることも万能な解決策にはなりえないことから、調査実施面での工夫だけではなく、調査設計面での工夫など、さまざまな観点からの試行錯誤が求められていることが指摘された。

最後に、人びとの「移ろいやすい」考え方や意見を、社会調査でどのように把握していくか、これまで用いられてきた質問項目を反省的に捉え直し、新しい試みも加えていく必要性、また、提案された数理モデルの解釈や計量モデルとの接合性、回収率向上へのアイディアなど、さまざまなトピックについて議論が交わされた。

参加人数:43名
 
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